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5. おわりに

(1)艶やかなる銘仙
1. はじめに
2. 銘仙の町の思い出
3. 銘仙の歴史
4. 銘仙のイメージ
5. おわりに
(2)あやしい着物
(3)銘仙雑考
(4)ちょっとあやしいきもの論

身体のサイズが大きい関係で、気に入ったアンティークの銘仙が着られなくて何度も涙した私も、最近やっと銘仙を手に入れました。銘仙の主要産地だった伊勢崎の織物組合が昭和60年頃に行われたイベントのために、昭和30年代の伊勢崎銘仙全盛期の技法を可能な限り復元して織った復刻品です。

 
一つは、薄い茶色の地に藍色の平行四辺形が連なった銘仙の柄としては極めてシンプルで地味なもので、「絣銘仙」の部類に入るのかなと思います。肌触りは、きわめて平滑でやや光沢があり、相当に目の詰んだ平織であることがわかります。
 
もう一点は、黒地に濃淡のある銀鼠色の直線で卍崩しの模様を描いたもので典型的なアールデコ様式です。直線の交点が白で抜けていて、さらによく見ると、経糸だけではなく、緯糸にも針のように細い糸のずれが出ていて、伊勢崎が得意とした精巧な「緯経絣」であることがわかります。

写真1

平行四辺形模様の伊勢崎銘仙
(2002年4月 秩父神社で)

写真2

卍崩し模様の伊勢崎銘仙
(2003年4月 大久保「ホテル海洋」で)

やっと銘仙を身にまとうことができたわけですけども、本音を言えば、やっぱり生まれ故郷の秩父銘仙を着てみたくなります。
 
2002年1月30日、秩父市熊木町の繊維工業試験場の建物(建物本体も昭和5年建造のモダン建築で文化財)を利用して「ちちぶ銘仙館」がオープンしました。展示室には、実物の機械を用いた解し織り技法の解説や、秩父銘仙全盛期の着尺や着物が展示されています。
 
たくさん残っている昭和前期のデザイン見本や織見本は、今でも十分に通用する美術工芸価値をもっています。これを機会にわずかでもいいですから、あの華やかな模様銘仙の着尺が秩父でよみがえることを期待しましょう。

写真3

「ちちぶ銘仙館」の外観
(2002年4月)

写真4

里帰りした秩父銘仙
(2002年4月 ちちぶ銘仙館で。ご協力「うきうききもの」の皆さん)

【改稿事情】
2001年05月 初稿執筆。同6月に「うきうき きもの」に掲載
2002年06月 「順子の着物大好き」に掲載(→Web版)
2002年12月 増補改稿して「艶やかなる銘仙」の題で『KIMONO道』2号(祥伝社)に掲載(2頁)(→KIMONO道版)
2003年05月 『Kimono姫』2号(祥伝社)に拡大再録(4頁)
2004年12月 Web版をKIMONO道版をベース再補訂したものに差し替え

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