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3. こういうのは、可愛くない

(1)艶やかなる銘仙
(2)あやしい着物
1. あやしい着物とは
2. お里が知れない子
3. こういうのは、可愛くない
(3)銘仙雑考
(4)ちょっとあやしいきもの論

「あやしい着物」も、すべてが愛敬があるわけではありません。中には可愛くない物もあります。
 
2003年12月1日、関西のお姐さまたち、れえすの花さん、夏海さん、ききょうさんたちと、京都の某所にある、ちょっと怪しい着物屋さんに行った時のことです。
 
皆なそれぞれに反物類を漁っている時でした。夏海さんが「順子さん、ちょっと、ちょっと」と呼んでます。「ほら、これこれ」と手渡された反物は、一見「大島紬」風の色柄、でも妙に軽い? 手触りはなんとなく薄いし、黒も浅い感じ。「ねっ、怪しいでしょう」と夏海さん。しかも値札をみると1万円!

写真1

この着物屋さん、とても掘り出し物があるのですけど、いくらなんでも本物の大島紬が1万円ということはありません。間違いなくコピー商品です。

写真2

写真3

商品名は「古代大島」。笑ってしまったのはそのデザインです。

本物の大島紬の証紙と比べてみましょう。

写真4

写真5

上が奄美大島産の「奄美大島紬」(地球印)、下が鹿児島(本土)産の「本場大島紬」(旗印)です。

この「古代大島」の証紙が、「奄美大島紬」の地球印の贋物であることがわかります。こうやって比較すると、はっきり相違がわかりますが、「たしか大島紬って地球のマークだったわよね」くらいのうろ覚えだったら、騙されてしまうかもしれません。

さらに言うと、「古代大島」の「伝承工芸品」は、本物では「伝統的工芸品」、左に見える赤丸マークの「品質保証票」は、本物の「通産大臣指定伝統的工芸品」の証紙とそっくりで、いかにも「らしく」作ってあります。

写真6

ここまでやってしまうと、明らかにユーザーを騙そうという意図が感じられ、同じ「あやしい着物」でも、ぜんぜん可愛くありません。

同じ頃、目黒碑文谷のリサイクル着物店「ひろ」に遊びに行った時、いつもお世話になっているオーナーに「ちょっと、これを見てちょうだい」と反物を渡されました。あるお金持ちの奥様から「夏結城」ということで持ち込まれたのですが、オーナーが「???」と思って買い取りを保留してあるということでした。

反物の端に有るはずの証紙がなく、「夏結城」と直接プリントしてあります。「これは、怪しい」と思い、さらに観察すると、薄茶の地に黒で織り出されている亀甲絣が妙に硬いのです。よく見ると、亀甲絣の小さな乱れが規則的に反復して現れます。と言うことは、織物ではなくプリント(型染め)だということで、出来の悪い贋物だろうという判断になりました。

この反物を購入された方は「夏結城」だと信じているそうなので、おそらく何10万円という高額なお買い物だったはずです。こうなると、可愛いの可愛くないのというレベルではなく、立派な商品詐欺です。
「ひろ」のオーナーが目利きだったので食い止められましたが、そうでなかったら、人手に渡るごとに連鎖的な被害が出るところでした。

つまり、コピー商品でもそれを承知で購入して着るのなら、ぜんぜん問題はないのですが、贋物を本物と信じ込ませて売れば、悪徳商法ということになるわけです。騙されないためには、やはり豊かな知識と物に触れる経験しかないと、改めて思いました。

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