ここまでやってしまうと、明らかにユーザーを騙そうという意図が感じられ、同じ「あやしい着物」でも、ぜんぜん可愛くありません。
同じ頃、目黒碑文谷のリサイクル着物店「ひろ」に遊びに行った時、いつもお世話になっているオーナーに「ちょっと、これを見てちょうだい」と反物を渡されました。あるお金持ちの奥様から「夏結城」ということで持ち込まれたのですが、オーナーが「???」と思って買い取りを保留してあるということでした。
反物の端に有るはずの証紙がなく、「夏結城」と直接プリントしてあります。「これは、怪しい」と思い、さらに観察すると、薄茶の地に黒で織り出されている亀甲絣が妙に硬いのです。よく見ると、亀甲絣の小さな乱れが規則的に反復して現れます。と言うことは、織物ではなくプリント(型染め)だということで、出来の悪い贋物だろうという判断になりました。
この反物を購入された方は「夏結城」だと信じているそうなので、おそらく何10万円という高額なお買い物だったはずです。こうなると、可愛いの可愛くないのというレベルではなく、立派な商品詐欺です。
「ひろ」のオーナーが目利きだったので食い止められましたが、そうでなかったら、人手に渡るごとに連鎖的な被害が出るところでした。
つまり、コピー商品でもそれを承知で購入して着るのなら、ぜんぜん問題はないのですが、贋物を本物と信じ込ませて売れば、悪徳商法ということになるわけです。騙されないためには、やはり豊かな知識と物に触れる経験しかないと、改めて思いました。
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