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2. お里が知れない子

(1)艶やかなる銘仙
(2)あやしい着物
1. あやしい着物とは
2. お里が知れない子
3. こういうのは可愛くない
(3)銘仙雑考
(4)ちょっとあやしいきもの論

群馬ネパ山さんからさっそく「あやしい着物」のお話をいただきました 

---------(以下、9月10日のメールから)---------
 
「あやしい着物」は妖しい模様♪ではなくて「素性が」あやしいという意味だったのですね・・・。私のも、大島に1枚混じっていそうです ^_^;)ネットオークションでリサイクル業者から入手した古着なのですが、「超〜豪華!」とだけ書いてあり(←の表現からして胡散臭いのですけど)、値段から言ってもまず「あやし組」に間違いないと思います(笑)「村山大島」でもなさそうで、ますます謎が・・・
 
「大島ですか?」と質問したところ、その業者からは「譲られた方が大島と言っていたのでそうだと思いますが、証紙等ありませんのでご自分で判断してください」との説明でした。
 
でも素人の私から見ても、本場モノでは無いだろうなぁ・・・何となく機械織っぽいのです。ちなみに手持ちの機械織の本場縞大島や緯双絣と比べて見ても、やっぱり何か違うよ〜な・・・どこの子だろう?という感じです。
 
ですが、モノクロ幾何学模様の色柄が気に入ったので、胴裏&八掛け共におNewにして洗い張り&仕立て直してもらいました。これはこれで、楽しんで着たいと思います。
 
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ネパ山さんの「あやしい大島」、様子からしても、年代からしても、私がイメージしてる「あやしい着物」の典型的なパターンだと思います。業者さんの言葉も、まさにそう言うしかないわけで・・・、本物と言い張らない(言い張れない)だけ良心的でしょう。
 
私がここで取り上げたいのは、ネパ山さんの言葉を借りれば、「どこの子だろう?」という着物です。かわいがってるのだけど、「お里が知れない」ってタイプです。「かわいいのだから、お里なんてわからなくていいさ」と思う一方で、やっぱり「おまえは、どこから来た子なの?」と思うのも人情です。
 
ところで、2002年の秋、仲良しのYUKO姐さんから「ネット・オークッションで『黄八』って出ていて気に入って買ったのだけど、なんか怪しいの。赤八丈なの」という画像付メールをもらいました。確かに、黒地に赤のラインが入った着物で「黄八丈? どこに黄色?」という感じでした。そこで、本郷〜湯島におデートした時(2002年11月14日)に着てきてもらいました。

写真1

写真で(コートを着ていますが)わかる通り、しっかりした黒地に鮮やかな赤のラインが入っています。生地はかなり目が詰まっていて、たしかに黄八丈(正確には黒八丈)っぽい艶もあります。とは言え、この鮮やかな赤は、どう見ても人工染料です。伊豆八丈島で生産される黄八丈・鳶八丈・黒八丈は、それぞれ、黄色をコブナグサ(八丈刈安)、鳶(樺)色をマダミ(タブの木)、黒色をシイで染め、すべて天然の植物染料で、人工染料は使いません。そうした意味では、YUKO姐さんの「赤八丈?」は、黒八丈風のコピー商品、つまり「あやしい着物」の仲間と思われます。

しかし、ご本人も気に入っているように、この「あやしい着物」は、良家の奥様のはずなのに、どこか粋でミステリアスな雰囲気をもつYUKOさんにとても似合っていました。「お里が知れない子だらか、余計にかわいい」ということもあると思うので、末永くかわいがってあげて欲しいと思いました。

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