|
|
|
|
|
【第45回】戸籍の性別変更法の実施 |
2004.11
|
|
|
|
|
|
|
2003年の7月に成立した「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」(以下、GID特例法)がいよいよ2004年7月16日から実施されました。
この法律については、本誌42号で詳しく解説しましたが、性別変更の申し立てができる人を性同一性障害者に限定していたり、望みの性別での生活実績を軽視していたり、子供がいる当事者を対象外にするという海外の性転換法にない厳しい制約がついていたり、様々な問題がある法律です。
実施初日の7月16日には、全国で10人ほどの人が、各地の家庭裁判所に変更の申し立てをしました。立法運動推進の中心的存在であったFTM作家の虎井まさ
し場合、かなり高いハードルがあるからです。
まず、GIDの専門医二人に、性同一性障害であることの診断書を書いてもらう必要があります。次に「特例法」第3条第2項に規定された厚生労働省令に則した書式の「治療の経過及び結果」を記した診断書を用意しなければなりません。
その具体的な内容は、平成16年5月18日の「厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神保健福祉課長通知」に記されています。
性別適合手術についての部分だけを解説しますと、「その治療に携わった医師の氏名及び所属機関」「治療の行われた期間及び治療の内容」「治療の経過及びそ
|
|
の結果についての意見(現在の生殖腺の機能並びに治療の妥当性、正当性についての評価)」を「具体的に示すこと。また、可能であれば手術記録を添付すること」となっています。
カルーセルさんが性別適合手術を受けたのは、30年以上も前のことで、執刀したドクター・ブローはこの世の人でなく、カサブランカの病院も存在しません。手術の記録が存在しないのです。こうした事情は、他の手術済みのニューハーフの方にも共通するものがあると思います。
救いなのは、手術の記録の添付に「可能であれば」という文言がついていることです。ただし、この点については、診断書を書く医師と手術をした医師が異なる場合には「診断を行った医師は、他の医師が作成した上記療法等についての診断書を別添する等、可能な範囲で資料収集に努める必要がある」とされているので、少なくとも「何も記録はありませんでした」で |
「初めて女性といっしょのお風呂」
|
は、家庭裁判所はOKしてくれそうにありません。
雑誌や新聞の報道によれば、カルーセルさんは「埼玉医大で体が女性であることの診断をしてもらった」(『女性自身』2004年7月27日号)そうですが、性同一性障害の診断書を取得したのか、手術に関する記録類をどの程度まで集めて提出したのか、現状ではわかならい部分も多く、家庭裁判所が性別変更の許可をすんなり出すかどうか、楽観できない部分もあります。
ともかく、たとえニューハーフの存在を無視して成立した法律であっても、法律として施行された以上、うまく乗って利用してしまうという手は有りだと思います。カルーセル麻紀さんの申し立てが認められれば、この法律をニューハーフの人達が利用できる道が大きく開かれるわけで、今後の動向に注目したいと思います。
***
ところで、私の近況ですが、6月に「性転換の社会史(1)」という論文を『中央大学社会科学研究所年報』8号に発表するなど地道に「性別越境の社会史」の研究を続けています。
戸籍の性別や性器の形にこだわらな私にとっては、「女」として仕事ができる環境と、「女」として接してくれる友達がいれば、それで十分なのです。 |
|
|
|
|
|