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【第44回】鉄道趣味と女装者 |
2004. 8
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もうずいぶん昔のことになります。仙台の小谷理美さんの企画で、クラブ・フェイクレディの仲間と、三陸の気仙沼に旅行したことがありました。楽しかった旅もそろそろ終わりに近づき、列車が前谷地という小さな駅を通過した時、理美さんが「順
=男の趣味という印象は強くあります。ところが、理美さんだけじゃなく、なぜか女装者には「鉄ちゃん」が目立つように思うのです。
例えば、アマチュア女装雑誌の『くいーん』には「列車シリーズ」と銘打って電車内や電車を背景に撮影した写真を30数回掲載し続けた静さんという方がいました。それどころか、名前は記せませんが、有名な女装者で、プロのトラベルライターをしている方もいます。
こう書くと、「いくら女の格好をしていても、女装者の中身が男である証拠」と言われてしまうかもしれません。でも、お医者さんから「中身は女」という診断書をもらっ
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ているMTF(男から女へ)の性同一性障害(GID)の人にも「鉄ちゃん」はいるのです。
私の古い知人のYさんは、すでに性別適合手術も済ませ、日常も女性として生活しているMTFのGIDです。2004年3月のGID研究会の三次会で久しぶりに出会った時、彼女は友人と鉄道話を熱心にしていました。
そこで、「鉄道とジェンダー」の話をすると、「そりゃあ、そうですよ。普段、女性の中で鉄道の話 |
「女性はこんなことしないらしい・・」
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は絶対にできません」という返事。そして「順子姐さん、時刻表を熱心に読んでいる女性がいたら、MTFの可能性を疑った方がいいですよ」と教えてくれました。
おもしろいのは、「鉄ちゃん」のMTFは、みんなそれを隠そうとすることです。やはり「女らしくない趣味」という感覚があるからでしょう。でも珍しい電車などを見ると、思わずその前に立って写真を撮ってしまったりして、「鉄ちゃん」も素性がバレてしまうのです。
私は、「鉄ちゃん」ではないので(ホント?)、なぜ、男から女へという方向性をもつ
を飛ばすのが、「あたしの理想」というニューハーフもけっこういるのです。
一つの仮説として、MTFは、子供の時から心の中の女らしさを自覚しているので、それを埋めあわせるために、一時期は男らしい趣味に走る、という説があります。でも、だったら、最終的に、男らしさ指向を断念して、「女」になることを決めた時に、男らしい趣味を捨てればいいのに……。
このテーマ、ジェンダーの形成と転換の複雑さを示しているのかもしれません。
(追記)
この文章を発表した後の2004年7月に、京都の国際日本文化研究センターの研究会で原武史先生(明治学院大学助教授)にお目にかかる機会がありました。「鉄ちゃんと女装者」のことをお話すると、とても興味を示されました。その内、なにか新しい見解が生まれるかもしれません。 |
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