【第34回】公立中学校でシンポジウム

2002. 02

10月26日、足立区立第11中学校(五反野)の講堂を埋め尽くした600名近い生徒と200名弱の父母や近在の方たちを前に、濃い海老茶地に更紗模様の着物姿の私は「少数者であることを弱みと考えずに、自分の個性・特性と考えて堂々と強く生きて欲しい」と語っていました。隣の席ではニューハーフ・タレントのはるな愛さんがうなずいています。
 
同校の学習発表会(文化祭)で



「9月26日の特別授業」

行われた生徒企画シンポジウム「男らしさ女らしさを通して、差異と差別を考える」のエンディング場面です。公立中学の公式行事に、はるなさんや私のようなトランスジェンダーが招かれるなんて、今までだったら考えられなかったことです。まさに画期的な試みでした。
 
そもそもの始まりは、同校で継続的に行われている「総合的な学習」(平成14年度から導入)の実験授業「よのなか科」(杉浦元一教諭担当、藤原和博さんコーデ
ィネート。レポートは小学館刊行の『総合教育技術』に連載)の特別講師を私が務めたことでした(9月26日)。
 
その様子は、世の中=生きた社会を楽しく学ぶユニークな授業実践としてNHK総合テレビの朝のニュース「おはよう日本」(10月2日放送)や地元誌で紹介されました。でも、何よりうれしかったのは、数多くのゲストを招いている授業なのに、生徒たちが



「10月26日のシンポジウム」

「一番印象に残っている授業」として私を選んでくれたことです。そして、その時のテーマ「差異と差別を考える」を全校生徒で深めようという企画が今回のシンポジウムだったのです。
 
生徒たちは「男らしさ女らしさについて目からウロコが落ちた」「少数者に対するイメージが変わった」などと感想を語ってくれました。そして、女性として堂々と普通
に(実際は普通以上にチャーミングに)頑張って生きているはるなさんの姿を目の当たりにして、人を差別することの無意味さを感じてくれたのではないでしょうか。
 
世の中にはいろいろな人間がいることを知る、できることならそうした少数派の人たちと直接の交流をもつことは、頭の柔軟な少年少女たちに「人間が生きる」ということを考えてもらう絶好の機会になると思います。今回の出会いを作ってくださった千葉俊治校長先生はじめ関係者の方々と生徒さんに心からお礼を申し上げるとともに、こうした積極的な試みが全国の学校に広がることを期待したいと思います。そして私たちトランスジェンダーもそれに応えられるよう、積極的に世の中に出ていくべきだと思うのです。
 
ところで、五反野駅(東武伊勢崎線)から学校へ行く道すがら、中学校なんて何年ぶりだろう?と考えていました。卒業してから3分の1世紀? 「う〜ん、大昔じゃん



「はるな愛さんと」

」。おまけに、愛さんのお歳を聞いたら「え〜っ、娘じゃん」。愛さんと「母娘コンビ」で全国の学校を廻れたらいいな、と密かに思った私でした。