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【第3回】初めての浴衣 |
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1995. 9 |
「お嬢さん、こんな柄はどお?」
1995年6月28日の夕方、場所は渋谷東急109の4階にあった着物の「三松」の前。
新宿に「出勤」するにはちょっと間があったので、「へ〜ぇ、今年の浴衣の流行ってこ
んななのかぁ」と眺めていたあたしにお店のベテラン店員さんが声をかけました。見
ると紺の地に大きなヒマワリが並んだ柄。こんなのを着たらまるで『ひまわり』(アマ
チュア女装雑誌)の広告塔だわぁと思い「ちょっと気に入らないわ」と答えるあたし。
「じゃあ、こっちは」と出してきた浴衣地に目が止まりました。黒地に太めの真っ赤な
ライン、その上に黒の大小の連珠文。なんて大胆なデザインなんでしょう。
「お姉さんのイメージにぴったり。うん、お姉さんにしか着られない柄だわ」と店員さん。
確かに普通の娘が着こなせる柄じゃあない。だけどあたしなら・・・。もう洗脳されかけ
てるあたし。
「デザイン、コシノジュンコよ」
「えっ、あたしも順子」
この瞬間、店員さんの勝が決まりました。
新宿3丁目の交差点。道行く人の視線を感じます。ただいつもと違うのは、どこか
Hでまとわりつくような男性の視線じゃなくて、若い女性の視線が多いこと。「わ〜っ」
「すご〜い」って感じ。ともかくすご〜く目立ってるみたい。確かに黒と赤の大模様の
浴衣に鮮やかな黄色地に紫を一筋通した帯だもんねぇ。後で言われたことだけど
「100m先からでも順子さんてわかるよ」なのだそうです。あたしは胴長短足の古典
的日本人体型だから着物はよく似合います。しかも普通の女の人に比べれば背丈
があるし、顔立ちは派手だし、どんな大きな柄でもどんな派手な色使いでも着物負け
がしません。だけど、仕立て上がった浴衣がこんなに派手になるとは、浴衣地を見た
時には思いませんでした。布地の裁ち方、着付けの仕方で印象が大きく変わるのも
着物のおもしろいところです。
「わ〜っ、順子さん!いらっしゃ〜い」
薄紅の絽の生地で仕立てた浴衣を粋に着付けてゾクッとするほどいい女っぷりのマ
マが出迎えてくれます。今日、7月29日は仲良しの宮沢万紀子ママのお店「ギザ」
のゆかた祭です。
「きゃ〜ぁ!順子さん、すご〜ぃ!」
藍に燕模様を白抜いた浴衣が日に焼けた肌によく似合う
スタッフの美弥子ちゃんが「こりゃあ、順子さんじゃなくっ
ちゃ、着られないよねぇ」と誉めて?くれます。今夜の「ギ
ザ」は真贋含んで浴衣娘が8人、浴衣男も2人、今夜ば
かりはちょっぴり肩身の狭い洋服のお客さんも交えて、飲
んで歌って、写真を撮りあって陽気に騒いだ。楽しい夜で
した。
妹分の明香が「お姉ちゃん、最近ほんとうにたのしそうだ
にゃあ」と言います。確かに楽しいです。自分のしたいこと
を素直にできるようになった感じで。もちろん金銭的・時間
的な制約の範囲でだけど。あたしが夜の新宿の街に流れ
てきてちょうど1年。少しだけ遊び方がわかってきたのかも
しれません。
ところで、「女装娘や女装の世界には興味があるのだけ
どお店に行く勇気がない」っていう男性ってけっこう多いみ
たいですね。
だけど、『ニューハーフ倶楽部』で紹介しているお店なら全
然こわい所なんかありませんよ。その証拠に風来坊のあ
たしがこうして無事でいるんだもん。興味があるんだったら
、まず一度行ってみること。ドアを開ければそこに新しい世 |
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界がひろがります。「梨沙」や「ギザ」は限りなく普通のスナックに近いので、気楽に
入れると思います。逆にちょっとディープでマニアックな雰囲気を味わいたかったら
「和」みたいなゴールデン街の店を訪ねればいいし。歌舞伎町区役所通りの、「ジュ
ネ」はちょうどその中間、おしゃべりするもよし、「女の子」とちょっと戯れるもよしです
(私もいるかも)。
どこも良心的な料金で、事前に電話すれば、ちゃんと料金体系を説明してくれるは
ずです。それでも心配だったら大きいの2枚お財布に入れておけば、まずどんな場合
でも大丈夫でしょう。
順子は「店から店への夜の蝶」どこかのお店でお目にかかった時にはよろしくね。 |
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