【第24回】お店取材余話

1999. 6



ミスティで」

この本が店頭に並ぶ頃には、もう夏まぢかですね。皆さんいかがお過ごしですか?
 
あたしはとっても忙しい春でした。3月は京都と東京の講演の間に大阪の白鳥美香さんの結婚披露宴に出席、4月はクラブ・フェイクレディ(CFL)のお花見、5月には東京では3年ぶりの模擬店「フェイクレディ」の一日営業(FL5)、そして初めて普通の世界(純女&純男)の結婚披露宴に出席する予定です。白鳥さんの披露宴とCFLのお花見の様子は、カラー頁にレポートしておきましたからご覧になってください。
  
そんなスケジュールに加えて、今号ではお店取材を3店も担当しました。大阪堂山の「マグネット」(幕戸成子ママ)新宿歌舞伎町の「MISTY」(池田麻里ママ)と「たかみ」(村田高美ママ)の各店です。3店に共通するのは、ママがアマチュア出身で私の友人だということ。もちろん、3人ともプロに転じた後、水商売世界で厳しい修行を積んで晴れて自分のお店をもった訳ですけど、本をたどれば同じアマチュア世界の仲間たち、やっぱり応援したくなるのが人情です。
   
私も本誌のお店取材に関係してずいぶん長くなりました。最初はこの世界に不案内な編集長さんたちの道案内人として、このごろはカメラマン兼レポーターとしてお店を取材させていただいています。そうした経験と、自分で模擬店のママをしたり、お手伝いホステスをしたりしている内に、自分なりの お店の見方ができてきたような気がします。それは、水商売のプロの視点でもなく、また純粋にお客さんの視点でもありません。「きちんと水商売の修行をしたことのない人間に何がわかるのよ」と言われればそれまでですけど、中間者の客観的な視点としての意味はあると思います。
  
私が「このお店は繁盛するな」と思うポイントは、お店の空間の充足度です。単に人や物の物理的な空間密度ではなく雰囲気の充足度の高さなのです。ママのコンセプトがお店の空間やスタッフの意識の隅々に行き渡っているようなお店は、まず間違いありません。そうした点で今まで取材したお店で印象的だったのは大阪堂山の「リバティ」でした。ママが一人で切り盛りする小さなお店でしたけど、一目で「ここは当たる!」と思いました。今回取材させていただいた3店はいずれも充足度が高くて期待できると思います。
  
逆に、ちょっと首を傾げるのは、雰囲気的に空虚な部分が感じられるお店、コンセプトがはっきりしないお店、スタッフのバランスが崩れているお店です。それなりの歴史をもつお店に、最近こうした傾向が感じられるのが気になります。常連客を抱えて安定感はあるものの新しいお客さんを引き付ける魅力に乏しいのでは、大不況時代の過当競争という厳しい状況下で下降路線を強いられるでしょう。思い切ったリニューアルが必要なのかもしれません。

女装系のお店世界は、あたしたち女装者にとっても、また女装者を愛する男性にとっても大切な空間ですし、日本特有の異性装文化だと思います。良い意味での競争を通じて、各店のレベルアップとこの世界全体の拡大を図っていっていただきたいと思います。
  
ところで大阪堂山の「贋作淑女」が、北野洋子ママの個人的な事情で4月11日をもちまして閉店となりました。私も名付け親として、「名誉大ママ」として大阪に行くたびに顔を出してきただけに残念です。洋子ママに代わりまして、ご来店いただいた皆様に心から御礼申し上げます。