【第23回】女顔・男顔

1999. 03


 ついこの間、新しい年を迎えたと思ったら、もう3月の声を聞こうとしています。皆さん
 いかがお過ごしですか? 順子のお正月は、黒地に扇模様を散らした華やかな小紋
 の着物を江戸風に粋に着付けて、混雑する三が日を避けてのんびり湯島天神に初
 詣。新年会は仲良しのお姉さん(純女・美人)と、おいしい日本料理屋さんで熱燗を
 差しつ差されつ。着物姿の美女二人、お店の注目の的でした。
  
 さて、今回のテーマは、あたしが「顔」を総合的に研究するまじめな学会「日本顔学
 会」に入会したのを記念して?「顔」です。以前、あたしがお手伝いしている新宿区
 役所通りのクラブ「ジュネ」(TEL:03-3209-7491)で、お客さんにこんなことを言われ
 




「女顔、それとも男顔?」

ました。
「おネエさん、直してるだろう?」
「???・・・」
「目と鼻とあご、整形してるよね」
  
身体にメスひとつ入れてないのが自
慢のあたしに向かって、まったく何て
失礼なことを!。でもまあ、整形「美
人」に間違われたのだから、と思って
怒りを抑えました。
  
あたしたち女装者にとって「顔は命」
なにしろ「ジュネ」がゴールデン街の
2階にあった昔々、酔っ払って急な
階段をダイビングして身体の前面ア
ザだらけになりながら、顔だけはか
すり傷ひとつ負わなかったお姐さん
が「あっぱれ、『女』の鏡」と称えられ
た世界ですからね。
   
そんなあたしたちの世界では、女顔
の決め手は顔のセンターライン、つま
り鼻の長さ・鼻の下の長さ・あごの長
さ、と言われています。この三つが短
ければ短いほど女顔的だということ
です。もう一つは頬からあごのライン
で、これが曲線的になればなるほど
女顔的になります。逆にエラが張って
たりあごの形が台形だったりすると男
 顔的になります。せっかく「日本顔学会」に女装家・三橋順子として入会させていた
 だいたのですから、こういった「男顔」「女顔」の問題をきちんと学問的に研究できた
 らいいなぁ、って思ってます。
  
 そこで、あたしの顔を分析してみると、頬からあごへのラインは、昔、女装クラブ時代
 のメイクさんに「千人に一人」と絶賛された自慢の女あご。あごの長さと鼻の下の長
 さはまあ合格。だけど鼻の長さは不合格ですね。鼻筋は通ってるけどけっこう大きく
 立派な男鼻です。お口はよく男性に「しゃぶらせたい」と言われるおちょぼ口ですけど
 目はけっして女性的ではありません。トータルすると、輪郭と口から下は女性的だけ
 ど、あとはあまり女っぽくない男性的な顔だと思います。
  
 ところで、美人揃いのあたしの友人たちを眺めて気づくのは、美人=女っぽい顔では 
 ないということ。むしろ、どこかに男っぽさがあった方が華のある美人になるようです。
 例の「階段落ち」のお姐さんも女性的輪郭の美人ですけども、鼻だけはあたしと同じ
 ように立派です。純女の方を観察していても、例えば女優の佐藤藍子さんのように、
 女性的輪郭+男っぽい目鼻=現代的美人という公式が成り立つような気がします。
 ニューハーフに美人が多いのは、この公式に当てはまる人が多いからではないでし
 ょうか。整形手術するなら全面的に女っぽくするより、ちょっと男っぽさを残した方が
 いいのかもしれませんね。
  
 「なんだ、結局、自分が美人だって言いたいのか」ですって? そう言われちゃうと返
 事に困りますけど、少なくとも自分の顔に不満は持ってませんね。整形は一度も考
 えたことありませんから。鏡を見るたびに、美人に生んでくれた両親とご祖先様の遺
 伝子に感謝してます。
 ただ、その鏡は「うぬぼれ鏡」という名前の鏡なのですけど・・・。