【第20回】
世界に羽ばたくフェイクレディ
1998. 07
暑中お見舞い申し上げます。皆様のご支援によって連載20回目を迎えることができ
ました。これからも順子をよろしくお願いいたします。
それにしても若いお嬢さんたちの今年の夏のファッションはすごいですねぇ。流行の
キャミソール・ドレスは、胸元の大胆な露出がポイントですから、中には乳首がかろう
じて隠れてるだけで、豊かな膨らみがほとんど見えちゃってる娘もいます。世のオジ
さんたちは、さぞ目のやり場に困ってる(うれしい)のじゃないでしょうか。 お陰で暑
がりの私は大助かり。ビスチェの上にシースルーのカーディガンだけ羽織って、下は
マイクロミニに生脚サンダルっていう露出度たっぷりの涼しいファッションで堂々と街
を歩けますもの。この格好だと、ちょっと上から覗くと半乳、下から覗けば半尻です。
数日前も新宿駅の階段をよそ見をしながら上っていたオジさんがコケました。原因は
あたしの半乳です。
このオジさんにしても、お店でお尻や太腿撫でてくるオジさんにしても女装者の身体
だってわかってて、見とれたり触ったりしてくる訳ですけど、そういうオジさんたちの
意識ってたいていヘテロなんです
よね。ヘテロ意識の男性が、本来
男性である女装者の身体に欲情
する、ここがもしろいところです。
「女」とう全体イメージに発情して
るのか「女」のパーツに欲情してい
るのか、それとも男が女装すると
いう虚構性に感じているのか?。
「発情装置」としての女装者、これ
を極めることが、この夏のあたしの
テーマです。さぁ、思い切り見ちゃ
うぞぉ!
さて、お話変わって、この5月に開
催された第7回東京国際レズビア
ン&ゲイ映画祭のフィルムコンテ
ストで、あたしの友人の尾川ルル
さん(大阪)制作の作品「We are
Transgenders」が主流のゲイ系の
作品を押しのけて見事グランプリ
に選ばれました。グランプリ作品が
「那須のホテルで」
出たのは3年ぶり、もちろんトランス系としては初の快挙でした。「性別を超え、自分
らしく生きる!」をテーマに10数名のトランスジェンダー(TG)の人々のインタビュー
によって日本のTGの現状と問題を鋭く指摘した社会派長編ドキュメンタリーです。
そうしたとてもまじめな作品の中で唯一、受賞上映会で大いに笑いをとったのはフィ
ルムのラストを飾ってるFLT(フェイクレディ・ツアーのシーン。FLTは、このエッセー
でも何度も触れたあたしが主宰する女装団体温泉旅行ですけど、実は昨年11月の
FLT6(那須高原)をルルさんに同行取材してもらったのです。
上映後、ロビーで「え〜っ、何で新幹線の中で缶ビール買ってるだけなのに、みんな
そんなに笑うのよぉ。あたしたちって、そんなにおかしい?」って騒いでたら、コンテス
トの審査員でゲイ・アーティストの大塚隆史さんに「いや〜ぁ、新幹線で行っちゃうと
ころがすごいですね」と言われてしまいました。「そんなぁ、ゲイの方たちだって新幹
線で旅行するでしょう!」って応えたら、「ともかく、順子さんたちのシーンが一番イン
パクトありましたよ」とのお話。 まあ、今まであたしがやってきた「悩みを越えて、明
るく楽しく、みんなで遊ぼうよ!」を認めていただけたのは、とてもうれしかったですし
日本のグランプリ作品は、ニューヨークやロンドンなど海外の映画祭でも上映されま
すから、これでいよいよ「世界にはばたくフェイクレディ」ですよぉ!。