back
講演会名: 六大学学生相談連絡会議研修会 講演
日時 2002年8月28日(水)
場所: 中央大学市ケ谷キャンパス
テーマ: 性別違和感を抱える学生をどう受け入れるか
−トランスジェンダーと大学教育−
生8月28日(水)、中央大学市ケ谷キャンパスで開かれた「六大学学生相談連絡会議研修会」で「性別違和感を抱える学生をどう受け入れるか −トランスジェンダーと大学教育−」という講演をしてきました。
六大学学生相談連絡会議は、早稲田大学・慶応義塾大学・明治大学・法政大学・立教大学・中央大学の東京の私立大学6校の学生相談室の担当の方々の連絡協議会で、最近いくつかの大学で性同一性障害(GID)を理由にして望みの性別での待遇を求める学生が顕在化したため、今年は中央大学が当番校ということもあって、私が上記の講演をすることになりました。

会場には、50名に近い各大学の学生相談担当者や学生部の方が集まり、2時間ほどの私の話を熱心に聞いてくださいました。

私が述べた主なポイントは下記の通りです。

@

ある程度の規模の大学なら、強い性別違和感をもつ学生が在籍していることは、確率的(約10000人に1人)にも当然で、特異なことではないという認識をもつべき。

A

異性装・性別越境それ自体は、「病」でも「性的逸脱」でもなく 服装表現・性別表現・ジェンダー選択は自由なのだから、基本的には本人の自主性に任せるべきである(放っておく)。

B

学生名簿の男女欄/男女識別記号、学生証の性別記載欄の撤廃など、学内におけるジェンダー・フリー化を推進し、環境整備につとめるべきこと。

C

性別違和感をもつ当事者が相談に訪れた場合は、どのような自分でありたいのか、そのために何が障害になっているのかを聞くこと。特に性自認(トランスジェンダー)の問題なのか、性的指向(同性愛)の問題なのか?をしっかり分別する。 最初から「病気」(性同一性障害)と決めつけるべきではない。

D

適当な参考書を紹介して知識を提供する。多様なトランスジェンダーの形態の中から、何が最も自分にふさわしい在り方かを自分で選択させることが大切。

E

学内での「女性扱い」(MTF)、「男性扱い」(FTM)を希望する場合は、希望する性別への適合度を慎重に観察して、ある程度(1〜4年間)の継続性を前提に、通称名の学内使用をはじめ可能な限り必要な措置をとること。

F

最大の難関になる望みの性別での就職には、大学側が格別の配慮と可能な限りのバックアップをして欲しい。

G

強い身体違和や性別違和感に由来する社会的不適応を訴えた場合は、性同一性障害の専門医を紹介して、専門的なカウンセリングを受けるように方向づけること。

H

全体として、性別違和感を抱える学生を「障害(病気)」として隔離的に処遇するのでなく(医療の手に委ねて済ませるのではなく)、大学という一つの社会全体で受け入れて行く姿勢が望まれる。大学生活の4年間が、トランスジェンダー志向の学生にとって、望みの性別で生きて行くための社会訓練の場になるようサポートすべきであること。
大学当局が、性別違和感を抱える学生の存在を認め、それに適切な対応しなければならないという意識を持ちはじめたのは、大きな進歩だと思いました。まだまだ現実には、一部の教職員の無理解や解決しなければならない課題も多いと効きましたが、現在、大学生活を送っている当事者、これから大学に進学しようとしている当事者の環境改善に、私の話が少しでも役に立てば、うれしく思います。