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叩かれる女たち
-テクスチュアル・ハラスメントとは何か-
著著: 長谷川 清美
単行本 245 p
出版社: 広済堂出版
発行: 2002年06月
価格: 1,785円
ISBN: 4331508803

テクスチュアル・ハラスメントとは、文章上の性的嫌がらせ、つまり、文章を使って、現状においては主に女性を対象にして行われる性的嫌がらせのことです。この本は、そのテクハラの構造を明らかにしたものです。
 
第1章では、小谷真理さん(SF評論家)が山形浩生氏(著述業)から受けた典型的なテクハラ事件「オルタ事件」の裁判を追い、テクハラの実態と構造を解明しています。長谷川さんたちと一緒に裁判をずっと応援傍聴した私としては、裁判の情景とその時の怒りがフィードバックされて、読んでいて感慨深いものがありました。また第2章では、女の叩かれ方の「ケース・スタディとして女性代議士を取り上げ、週刊誌の記事を素材に詳細な分析を加えています。とりわけ扇千景さんへのテクハラの分析がおもしろかったです。第3章は、小谷真理+上野千鶴子+斉藤環+北原みのりという豪華メンバーによる共同討議「テクハラについて」。読みはじめたら止められないハイレベルなアンチ・テクハラ「共同謀議」になっています。
 
ところで、「オルタ裁判」の被告として、東京地方裁判所から悪質な名誉毀損を認定され、損害賠償330万円の支払いを命じられた山形浩生氏は、判決後、朝日新聞の書評委員に任命されています。裁判の中で、山形氏の買売春や女性・老人に対する「特異な」人権意識が明らかになっているにもかかわらずです(本書202頁)。朝日新聞文化部の見識ってこの程度のレベルだったのですね。