back
性転換−53歳で女性になった大学教授−
著著: ディアドラ・N・マクロスキー
(翻訳) 野中 邦子
文庫 402 p
出版社: 文芸春秋
発行: 2001年05月
価格: 750円(税込)
ISBN: 4167651068

アイオワ大学経済学・歴史学教授、52歳のドナルド・マクロスキーは、自分を「女性を愛する男で、女装はただの趣味」と信じて疑ってませんでした。経済学者として高い社会的評価を得て、妻との間に一男一女をもうけ、恵まれた人生を送っていたはずの彼は、ある日「本物の女になりたい」と気づきます。
 
本書は、一家離散の悲劇を代償に、周囲の誤解と偏見と戦いながら、度重なる手術を経て、わずか2年間で「なりたかった自分」、女性としての人生を手に入れた著者の回想録です。
 
男性から女性への移行プロセスとそれに伴うエピソード、その間に気づいた女と男、性別をめぐる様々な知見が豊富に盛り込まれた本書は、ヒューマン・ドキュメントとして一流のおもしろさをもっています。また、掲載された著者の写真は、男性から女性への転換という現実をリアルに物語りとても衝撃的です。
 
また本書は性別越境者を取り巻く欧米社会の実情報告としても読むことができるでしょう。たとえば、客員教授として赴任するオランダの大学に性転換のことを報告した際、学長が「ふむ、わかった。だが、なぜわざわざ報告する?なにか支障があるかね?」と述べるシーンなど、昨年(2000年度)やっとトランスジェンダーの大学講師が誕生したものの、性別越境者の社会的受け入れが遅れている日本の現状と比べて考えさせられました。
 
性別越境の当事者の方にはもちろん、大勢の方に読んでいただきたい一冊です。