[ 2000年5月(まとめ書き) ] |
[2000年5月13日(土)着物姿でお会食]
今日、お店(新宿歌舞伎町のニューハーフ・パブ「ミスティ」)のお客さま(順子を贔屓にしてくださる社長さん)のご招待で、お魚料理屋さんに連れていっていただきました。場所が、下町(台東区下谷)でお座敷の日本料理屋さん、それにその社長さんが、「順子の着物姿を見たい」と以前言っていたのを思い出して、着物で出かけることにしました。 ところが、朝から雨模様。どうしようか迷っていたら、午後になってようやく上がったようなので、支度を始めました。GW(4日)のパーティで着て、そのまま出してあった青みがかった緑の縞の胴抜き仕立ての小紋に、桧皮模様の帯を銀座結び(角出)に締めました。帯締めと帯揚げは、うぐいす色です。 やっと、支度が終わり、「うん、今日もまあまあうまくできたな。あたしでもやっぱり少しずつ上手になってるのかな」と満足して(自分で着付けて外出するのはこの日が7回目)、家を出ようとしたら、また雨がぽつぽつ降り出していました。時間的にももう「撤退」はできないので、傘をさしながらそのまま出かけました。 夕方6時、待ち合わせの鴬谷駅に着いた時には、けっこうな本降りになっていました。幸い、社長さんが、私の着物姿を喜んでくださり、お食事するお料理屋さんまでは、タクシーで連れて行ってくださったので、 ほとんど濡れずに無事でした。 お料理屋さんは、はっきり言ってちょっときたない外観の小さなお店なのでした。ところが、中身は、まさしく「知る人ぞ知る」という感じで、毛がに、本マグロ、フグ鍋をいただいたのですけども、どれもとてもおいしかったです。とりわけ本マグロのお刺し身は、普段食べてるマグロと違うお魚と思えたほどの絶品でした。 お料理屋さんを出た頃には、ようやく雨も上がっていました。同伴出勤の形でタクシーで新宿の店に直行ということになりました。お店に着いた時、常連のお客様の女性(30歳くらいのキャリアウーマン)が私を見て「わぁ、順子さん、今夜は着物なんだぁ。すてきぃ!。いいなぁ、わたしも着たいなぁ。でも、着物なんて七五三以来着てないからなぁ」と言ってくれました。うれしかったですけども、何か着物文化の現状を垣間見た感じで複雑な気持ちでした。
[2000年5月18日(木)中央大学へ]
12時過ぎに家を出て中央大学へ。トランスジェンダー研究会の杉浦講師、院生の石田君と研究室で資料の受け渡しと打ち合わせ。夕方から社会学のY講師(男性)をまじえて、高畑不動駅前の居酒屋さんで「夜の研究会」となりました。
[2000年5月20日(土)松本侑子さんの対談]
中目黒の目黒区女性センターで開かれる「フェミニストきなり」主催の松本侑子さんと加藤節子さんの対談を聞きに行きました。加藤さんが翻訳したデンマークの女性作家スネンサ・ブレガーの自伝的小説『フレッシュクリーム』と松本さんの童話批評『罪深い姫の物語』を題材に、「欲望を生きること&表現すること」がテーマ。前日、別件の用事で侑子さんと電話でお話していてこの話になり、あたしの地元(目黒)における草の根的フェミニズムの様子も知りたくて、雨の中を出かけました。 お天気が悪いせいか会場は20人ほどの寂しい入りで、参加者もなんだかくすんだ感じで元気がないように思っていたら、そこに鮮やかな若草色のスーツ姿の侑子さんが登場して、一気に会場が活気づきました。つくづく「華」のある人だと思います。彼女を見ていると、美しい容姿と磨きのかかったファッションセンスに加えて、身体から発散する旺盛な精神的&知的エネルギーが「華」には不可欠であることがよくわかります。あたしは、そうした彼女に接することで、いつも精神的エネルギーのおすそ分けに預かれるような気になるのです(つまり、元気が出るということ)。 それぞれの立場からお二人が語る男性中心社会の中で女性が自由に生きようとする時の困難さを、性別二元社会の中で生きていこうとする自分の立場と重ねあわせて聞いていました。会が終った帰り道、「きなり」の松田知恵さんたちが誘ってくださったので、二次会の居酒屋にご一緒して、2時間ほどいろいろお話をしました。理論系ではなく現場のフェミニズムの前線にいる方のお話を聞けていろいろ参考になった一日でした。
[2000年5月22日(月)月蝕歌劇団「家畜人ヤプー」公演]
今日は、大塚の萬スタジオに月蝕歌劇団の「家畜人ヤプー」の公演を見に行きました。舞台の雰囲気に合わせて左のおっぱいの裾野に入れた赤薔薇のタトゥーも露な黒のキャミソールに黒のマイクロミニ、黒の網タイツ、黒のアンクルブーツという黒ずくめのちょぴりビザールっぽいファッションです。 千秋楽の最終公演ということで、客席はぎゅうぎゅう詰めの超満員。A指定席券を持っていたのに最上段の一番隅の椅子席に案内され、大いに不満でしたけども、後で聞くと、前の方の椅子席は足元の床にまで人が座ってもっときつかったようですし、高い位置だったので遠くても舞台の前景が見渡せたので我慢しました。 少女歌劇団のお嬢さんたちは、彼女たちなりの熱演で、まあまあチケット代程度には楽しめたけども、そもそも、壮大なスケールとアクの強さ(エグイ!)で名高い伝説的なSFSM小説を20歳前後のお嬢さんたちに演じさせるのは、無理だったように思います。早い話、主人公の日本人青年麟一郎がヤプーにされる時、衣類が身につけられない体質に改造されるので、当然裸体で演じなくちゃいけないのだけども、その役も女性がやっているので着衣のままで、演出上の制約が多すぎるのです。 終演後、招待席で見ていたお友達のSF評論家小谷真理さんとその夫君の巽孝之慶応義塾大学教授と合流して、大塚駅前のうなぎ屋で、巽先生(「畜権神授説」の論文があるヤプー研究家でもある)や小谷さんに今日の公演の批評をいろいろうかがいました。観劇の直後に一流の評論家の批評をダイレクトにうかがうことができるということは、考えてみると、とても幸せなことだと思います。 お二人と新宿駅で別れて、久しぶりに「ジュネ」で夜明かしとなりました。
[2000年5月31日(水)『美輪明宏という生き方』]
先週からお篭もり状態で、6月に青弓社から刊行される美輪明宏さんについての評論集『美輪明宏という生き方』の原稿を執筆していました。4月末から大宅文庫に4回通って集めた美輪さんの膨大なインタビュー記事を分析していく手法で、美輪さんの女装についての意識とスタイルの変化を時代順に追跡し、美輪さんの女装観と一般の女装者のそれを比較した「美輪明宏と女装」(400字×35枚)、美輪さんがミソジニー(女性嫌悪)なゲイであると断定した上野千鶴子さんの言説を再検討して、美輪さんの女性親和性とヘテロ意識を明らかにした「美輪明宏の女性観・性愛観」(400字×18枚)を書き上げ、今日、送稿しました。 この評論集には、15人の執筆者による様々な角度からの長短16本の評論が収録されてますが、あたしの2本の評論は、それぞれ今まであまり検討されていなかった側面を明らかにできたと思ってます。一般書店で平積みになってるので(1600円)、ぜひ大勢の方に読んでいただきたいと思います。
2000/05
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