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2005年02月05日(土) 足利銘仙の展示会を見に亀戸へ

日は、久しぶりの「お遊び日」。足利銘仙の展示会を見に亀戸へ。
私の着物は、黒地に赤で大輪の菊を織り出した足利銘仙。柄は季節はずれなのだけど、今日の展示会の「きものACT」さんで作ったものなので。帯は銀と黒の鱗。長襦袢&半襟、それに帯揚げは芥子、帯締は萌黄。
亀戸天神。空は冬晴れ。
11時、家を出て、東横線・山の手線・総武線を乗り継いで、江東区の亀戸へ。11時50分、亀戸駅に到着。約束の北口に めめさんが待っていて、1ヵ月遅れの新年のご挨拶。おしゃべりしている所に、定刻に数分遅れて茜さんが駆けてきて、全員集合。
 
めめさんは比較のために別の会社の復刻銘仙、茜さんは今日も昭和の銘仙で時空を超えた装い。
 
まずは、亀戸天神にお参りなのだけども、歩くにはちょっと距離があるので、タクシーで鳥居の前まで行ってしまいました(660円)。
お太鼓橋で
 歌川広重「江戸名所百景 亀戸天神境内」
亀戸天神は、11年前に1度来ているはずなのだけど、境内に入ってもほとんど記憶がありません。どうも以前に来たときは、裏から入ったような・・・?
 
歌川広重の「江戸名所百景」にも描かれ、帯結びの「お太鼓」の語源になっているという、反りがすごくきつい太鼓橋を渡ります。
お太鼓橋の上から。
階段が設置されているので上がれるけども、もしなかったら草履や下駄ではちょっと上がれそうもないほどの急勾配です。橋の頂点に立つと、藤の木がたくさん植えられている境内が一望できて、花の季節はさぞ見事な眺めでしょう。
社前の大提灯の前で
こちらは11年前(1994年4月)
社前の「亀戸天満宮」の大提灯を見て、やっと記憶が戻ってきました。
(右が11年前)
茜さんは丑歳らしい。
梅はまだほんの少し
お参りして、鷽(うそ)と卯槌を描いた珍しい絵馬を購入。
亀戸大根の店「升本」の前で
これが亀戸大根
お参りを終えて、天神通り商店街を駅の方向に戻り、亀戸大根が名物の割烹「升本」へ。ところが、団体さんが入っていて満席。仕方なく予約をお願いして、駅前通り商店街をぶらぶらしながら、駅の西側の「カメリヤプラザ」9Fで開催中の、京都の着物メーカー「きものACT」さんの展示会「大正ロマン 模様銘仙展−美しき黄昏−」へ、予定より早く顔を出しました。
 
いつもメールでやり取りしている中西康一郎さんに初対面のご挨拶をして、たくさん並んでいる足利銘仙をざっと見せていただきます。私が書いた「艶やかな銘仙」が掲載されている『KIMONO姫』2号が広げられてありました(うれしい)。
 
「また後でゆっくり参ります」と言い置いて、「升本」へ。亀戸大根は、江戸時代から江戸の東郊のこの地域で栽培されていた大根を、「升本」が保存・栽培しているとのこと。見た感じ、根(白いところ)が細く、緑の葉が大きく、野生種に近い感じ。
お鍋の左の皿は、亀戸大根スティクと味噌漬け
ところが、予約した13時半になってもまだ席が空かず、店内でしばらく待ち、14時近くになってやっとお席に。まず、前付の天婦羅。亀戸大根と海老のかき揚げがおいしい。考えてみると、大根の天婦羅って食べたことがないような・・・。
 
続いて大きなお鍋が出てきました。「これ3人分?」と思ったら、銘々でした。ちょっとびっくりのボリューム。
亀戸の象徴?「羽亀」
怪しい物好きの怪しい人
「亀戸大根あさり鍋」は、名称そのままの亀戸大根ほかの野菜と、あさりがたくさん入った味噌仕立てのお鍋。菜入りの麦飯にかけて食べるのですけど、いろいろな出汁がきいた味噌味が絶品で、汗が出るくらい身体が暖まります。これで、1890円なら、お腹をすかせて待ったかいがあったという感じ。
 
3人ともすっかり満足してお会計。ところが、男性支配人があたしの美貌にみとれて(←この歳になってもまだ見栄をはる)、お預かり金額の桁を入力し間違え、「お預り ¥60,000 お釣り ¥54,330」というすごいレシートをもらいました(珍しいので保存)。
 
駅前通りにある「舛本」の売店で、お土産に唐芥子の南蛮漬けと大根葉のふりかけを買って、亀戸駅前へ。
 
そこに怪しい物はありました。噴水になっている親亀・子亀・孫亀の彫刻なのですが、よく見ると翼があります。一番上の孫亀などはまさに飛び立とうとしています。プレートには「羽亀」とありますが、私にはガメラの三段重ねに思えました(後で思い出したらガメラはロケット推進でした)。亀戸だから亀の彫刻なのでしょうけど、なんか、微妙にズレているような・・・・。
「きものACT」展示会で。左から茜さん、中西さん、私、めめさん、スタッフさん。
左から某社復刻銘仙、きものACT復刻銘仙、アンティーク銘仙。
15時頃、再び「きものACT」さんの展示会へ。大好きな銘仙の反物を、これだけまとめて見るのは初めて。銘仙全盛期の昭和30年代の色柄を、当時を知る職人さん(かなり高齢)の手で可能な限りそのまま復刻しているのが、「きものACT」の復刻足利銘仙の最大のセールスポイント。
 
その良心的な努力が、実物を並べてみるとよく解ります。
「侍」の前で
お店の目印の古いコーヒーミルもそのまま
亀戸修業時代の私(1994年1月)
現在とぜんぜん雰囲気が違うでしょう。歳月は人を変える(老けさせる)ということです。
また、当然のことながら、サイトで見本を見るのと、実物とでは印象がぜんぜん違います。「あれ、こんなのあったっけ?」という感じで、眺めたり身にあてたりしているうちにどんどん時間がたっていきます。そろそろ決めなくちゃと思いながらも、まだ迷う私。
 
結局、私の好みと、まったく同じ色柄の当時の物が『別冊太陽』に写真掲載されているという資料性を考慮して、いかにもアール・デコという感じの黒地に白と臙脂で重ねた折れ線を引いた幾何学模様の反物に決定。
 
すっかり長居をしてしまい、中西さんに送られて会場を後にしたのは、もう17時過ぎでした。
 
でも、もう一軒、行きたい所が・・・。ガードをくぐり南口の少し怪しい路地に入って、駅の東口へ出て、駅前にある「珈琲道場 侍」という喫茶店へ。
 
ここは、コーヒーがおいしいだけでなく、カウンターの椅子席がぜんぶロッキングチェアーというユニークなお店です。実は、今を去ること11〜13年前、私は、約3年間、月に3〜5回ほど、つまり百数十回も亀戸の某所に通っており、行き帰りにこの喫茶店をよく利用していました。
 
つまり、修業時代(←何の?)のなつかしい思い出がある店なのです。
入ってみて、レトロな内装も、織り目正しいボーイさんの接客も、そしてコーヒーの味も、まったく変ってなくて感激!
 
亀戸駅から電車に乗ったのは、18時過ぎ。よく歩き、おいしいものを食べ、大好きな銘仙をたくさん見て、そして、よく笑った楽しい一日でした。
 
私のちょっと訳アリの思い出にまで、つきあってくださった、めめさん、茜さん、ありがとうございました。
おしまい...