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2002年09月29日(日) 越後塩沢小旅行

本顔学会大会(新潟)に出席した帰路(と言うか、大会2日目をサボって)、
伝統織物の里、塩沢に寄ってきました。あたしの出で立ちは、濃淡の薄茶で細かい疋田模様を織り出した赤城生紬の単に緑色ぼかしの折鶴模様の帯。塩沢を着て行ければ良かったのですが、あたしの塩沢紬は袷なので。
米どころ南魚沼の秋
新潟から10時10分の新幹線で稲刈りが終わった越後平野を眺めながら越後湯沢へ。新潟平野は日が差していたのに、上越国境の山が近づくにつれて沿線の山に雲が掛かりはじめ、湯沢は雨。旅行バッグをコインロッカーに預けて、ほとんど誰も乗っていない11時19分発の在来線(上越線)に乗って戻るように塩沢へ。塩沢の駅で下りたのは、あたしだけ。駅もとても小さくて、売店ひとつありません。案内地図があったので、目的の場所は確認できました。幸い雨はほとんど止んでいたので、雨上がりの道をトコトコ歩き出しました。
織の文化館 塩沢つむぎ記念館
まず、雪国の生活を記録した『北越雪譜』の著者として知られる塩沢町生まれの文人、鈴木牧之(すずきぼくし 1770〜1842)の資料館へ。商工会議所の隣にある資料館は思っていたより立派な建物で、牧之個人だけではなく雪国の文化という観点の資料館でした。同地で縮問屋を営みながら俳諧と書画をよくした牧之が、滝沢馬琴、山東京伝・京山、十返舎一九など、江戸後期を代表するそうそうたる文人たちと交友があったことを知って、改めて江戸時代の地方文化の厚みを感じました。また、江戸期の山村風俗の記録として貴重な「秋山紀行」の彩色原画(写真)も興味深かったです。2階の半分は、塩沢の織物の展示で、特に越後上布(麻)の制作工程の大変さがよくわかりました。
鈴木牧之資料館
充実した展示に思わずゆっくりしてしまい、急いで、駅の方向に戻り、「織の文化館 塩沢つむぎ記念館」へ。1階が物産館、2階が体験工房という構成ですが、電車の時間の関係で「織り体験」はパスしました。代りに制作工程を紹介したビデオを見て、平織の塩沢紬に対して、本塩沢が強撚糸を緯糸に使った「お召し」であること、夏塩沢が越後上布(麻織物)の技法を絹織物に応用したことなど、今まであやふやだった知識を確認したり補強したりできました。
つむぎ記念館で
物産館には、本塩沢、塩沢紬、夏塩沢の着尺が、産地直販価格で販売されていました。お値段を見ると、一般小売価格の3分の1以下!。5年ほど前に塩沢紬を「一般小売価格」で買ったあたしとしては、「そりゃあ、ないでしょう」と思ってしまいます。夏塩沢などは、シーズンが過ぎている事情もあって、最上クラスのものが、453,000円 → 119,000円と4分の1近いお値段。一般小売価格だったら絶対に手を出さない(出せない)けど、この価格だと考慮の余地有りです。やはり日本の着物業界、あまりにも中間マージンが大きすぎるのではないでしょうか。それが、購入者層をますます狭めて、着物業界の首を自分で絞める結果になっているように思います。
塩沢駅
道端にコスモスや彼岸花が咲く道を駅へ。13時33分の上越線に乗り、コシヒカリの最上級品魚沼米の収穫が終わった田んぼを車窓に見ながら越後湯沢へ戻りました。2時間ちょっとの寄り道でしたけども、充実した小旅行でした。
おしまい...